- 著者
- 高中 彰良
- 画
- 三枝 真弓
- 内容
- 著者コメント
現代日本を舞台としてドラマチックな出会いを考えたときに、人ではなく物がきっかけとなるとしたら……で、できたお話です。
何の接点もないふたりが出会うにはウェブサービスの利用が一番あり得そうで、ネットオークション品の引き渡しを最初の出会いにしました。
それ以外にも、新旧、和洋の要素をいろいろ入れて、楽しく執筆した次第です。子供時代のトラウマでなかなか自己主張できない櫻子ですが、冬臣のあたたかい愛情に包まれて成長していく姿を応援していただければ何よりです。
八年ぶりの再会。祖父の形見の時計が繋いだ、しっとり甘い恋物語。
高校生だった櫻子は幼い頃に両親を交通事故で亡くし、一大アパレルメーカー会長の祖父と一緒に暮らしていた。 ある日、祖父がネットオークションでとあるアンティーク時計を購入する。その売主であった冬臣は自己破産も考えていたが、妻との思い出の品を譲り受けることができた櫻子の祖父から多額の支援を受けた。これが櫻子と冬臣の最初の出会いだった。
そして八年が経ち、二人の立場は逆転していたのだった。 会長の孫娘で深窓の令嬢だった櫻子は、祖父の死後派遣会社社員として親族の目を避けひっそりと暮らしていた。一方の冬臣は、八年前の支援のおかげで経営コンサルタント会社ＣＥＯとして成功していた。
静かに暮らしていた櫻子の元に、会長孫娘という名ゆえに借金の形として結婚するという、前時代的な政略結婚の話がやってくる。それを知った冬臣は、八年ぶりに櫻子の前に現れた。 「会長には恩がある。会長亡き今、できる限りのことをあなたにするつもりで資金援助に応じてもいい。ただし、二億の金が動くんだ、その覚悟をみせてほしい」と。 冬臣が提案したのは、櫻子との偽装結婚だった――。
